歴史を変えた10の薬 (トーマス・ヘイガー著)

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コロナウイルスが猛威を振るい、全世界で警戒が高まっています。感染者数や政府の対策など、毎日のニュースに目が離せません。

今回は、どのように人類が病気と戦い、薬を開発してきたか、その様子が記された「歴史を変えた10の薬」をご紹介します。

本書には、身近な痛み止めや抗うつ薬、睡眠薬などから、違法認定される前のアヘンなどの薬の起源や開発の経緯がまるで映画のようにドラマティックな展開で示されています。

また人類が戦ってきた感染症についても克明に記されており、その歴史は非常に興味深いものでした。

強い感染力と高い致死率の天然痘

かつて、全世界で3億人以上の命を奪ったと推定される天然痘。高い感染力と致死率で「死の病」として人びとから恐れられていました。

本書からその一部内容をご紹介します。(閲覧注意!!)

天然痘にかかった人は隔離され、家族などの濃厚接触者も同じく隔離されることになりました。町に天然痘の患者が現れたら、故郷を離れたほうがいいとまで言われるほどに…‥。

重篤患者は「発熱病院」に収容され、常に監視をされる生活になりました。昔も今も変わらず感染症は人びとを恐怖に陥れてきました。

天然痘から人類を救ったのは、なんと一人のイギリス人女性。

夫の出張でトルコに移住した際に予防法を発見し、多くの命が助かることになりました。のちにワクチン開発となるのですが、その過程はなんともドラマティックな展開でどんどん読みすすめてしまいました。

ワクチン開発については、囚人や孤児を使って臨床試験を行った記録も書かれており、当時の様子がとてもよくわかります。人類が戦ってきた感染症の歴史を見ると、いろんな犠牲の上に生き延びてきたことがわかり、ますます命の尊さを感じました。

自分たちができることは、新薬開発とまでいかなくても、とにかく大切な人を守るため、自分を守るため、外出を自粛し、感染を広げないことですね。

どのように人類が薬と付き合い、法律を定め、開発し、制度をもうけていくのか……。歴史を見る目を変えてくれる一冊です。

歴史を変えた10の薬

書籍
歴史を変えた10の薬

トーマス・ヘイガー 著
ISBN:9784799108710
定価:本体¥2,200円+税

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内容

鎮痛薬やワクチンなど、昔からある医薬品を中心に、その起源や薬の開発のいきさつなどを紹介しながら、その薬と社会とのかかわりが描かれています。現在の製薬企業のありかたや医薬関連の規制についての話や、とくに米国で社会問題となっている薬物依存症の状況も盛り込まれ、製薬をめぐる世界を俯瞰してみることができます。薬に関する科学的な説明部分もわかりやすく簡潔で、開発のいきさつは物語を読むようにドラマティックで興味を引き、しかも全体的にコンパクトにまとまっているので、一般の人も抵抗なく飽きずに楽しめる内容です。単なる薬にまつわる「小ネタ集」ではありません(もちろん、驚くべき小ネタもたくさんあります)。有史以来、ヒトがどのように薬と付き合い、法律を定め(そのことにより裏の世界が開花しました)、開発され、制度がもうけられ、これからどうなっていくのか……。きっと世界史を見る目を変えてくれるでしょう。

目次

プロローグ 5万錠の薬
Chapter1 喜びをもたらす植物からアヘン
Chapter2 レディ・メアリーの怪物
Chapter3 ミッキーフィンと抱水クロラール
Chapter4 咳にヘロイン
Chapter5 魔法の弾丸
Chapter6 最後の未開の地、脳
Chapter7 セックスと薬ともうひとつの薬
Chapter8 魅惑の環
Chapter9 個人的な物語、スタチン
Chapter10 究極の血液、モノクローナル抗体
エピローグ 薬の将来