【第4回実況中継】大嶋信頼先生「あなたの才能があなたを苦しめる」発売記念セミナー
ナラティブセラピーとの出会い
ーー大嶋先生は、「物語」を作り、それを読者にご提供されているとお聞きしました。「物語」を自分で作る方法について教えていただけますか。
大嶋 私は最初、催眠のお師匠さんを通じて「物語」に出会いました。お師匠さんの「催眠養成講座」に参加したときです。そこには、現役バリバリのお医者さんのような方がいると思ったら、兄ちゃんみたいな人と、なんだかチャラい姉ちゃんがいて、「この子たち、絶対専門家じゃないぞ」と思いました。
お師匠さんが言うには、「本物のセラピストは絶対に表には出ない人」だそうです。街の角で、汚いビルでやっているんだと。まさにそれが、催眠のお師匠さんだったのね。誰からも見向きもされないけど、腕の良さは本物だとお師匠さんは言っていました。
その講座にきれいなお姉さんがいらして。私ってチャラく見えるらしいんですよ。本当はとても緊張しているのに、他人からはチャラく見えちゃう。自己紹介タイムで、私の出番が回ってくると、いきなり私の代わりにお師匠さんがしゃべりだしたの。「大嶋さんは苦労人です」って。「こう見えても、5人の子どもを育てているんですよ」と。「えー、マジですか」って思ったよね。
私はその話に乗っかって、「そうなんです、5人の子どもがいます」と言いました。「とても大変で、生活費もキツキツです。この講座を受けて、もっと稼げるようになって、子どもたちを養っていきたいなと思います」って言ったのね。これはひとつの「物語」ね。でも、一般的にはウソ。なぜそんな下手くそなウソをつくのってなるわけね。
でも、この「5人の子ども」というのが、見事なメタファーになっているのね。メタファーとは暗喩(ゆ)です。ここでは、「5人の子どもがいる大嶋さんは、女性に手を出さないでくださいね」という意味を含んでいます。女性側にも、「大嶋さんには5人の子どもがいるから、距離を開けてくださいね」と。ソーシャルディスタンスですね。いきなり1発目で、このようなメタファーを入れてきたんです。
同時に、「この講座では、メタファーを使いますよ」と参加者に伝えています。1発目にパンチを入れられた私は、「おー、こういうことなんだな」とわかったわけ。実は、参加者を見た瞬間、「ここには、いてもしょうがないな。ここで学ぶべきことは何もないな」と思っていたんです。だから見透かされたのかな。「なんて頭のいい先生なんだ」と思いましたよ。
「物語」は誰でも作れる
メタファーという暗喩を含んだ物語は、誰でも作ることができます。それが、ナラティブセラピーの面白いところ。そして、作るには客観的なデータが必要です。私が必ず取るデータは、相手の「身長」や「体重」また「病気の年数」などです。客観的なデータがとても大切です。
情報も大切です。丁寧に、丁寧に情報を集めます。そして、大体30データほど集めて、頭の中でぐるぐる回す。5回くらいこれを繰り返すと、物語ができあがるのね。これは、面白いよ。客観的なデータを繰り返し、繰り返し頭の中で唱えていると、ファーストコンタクトで全く分からなかったその人の物語が見えてきます。
普通の人が見えない物語ができあがってくるのね。これは本当に感動します。それを面接中にやるわけね。ざっと相手のことを聞いて、頭の中で繰り返し唱えていくと、ポッと最後にひらめく。それは、ものすごく美しい物語なんです。ふっと無意識の世界に入ったとき、物語ができあがります。(つづく)
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