【第6回】大嶋信頼氏 連載コラム/嫉妬がなくなると人間関係の悩みが消え、自分に軸ができる、人に振り回されなくなる
私は子どもの頃から「人間関係が下手」ということで悩んできました。
他人の顔色を常に気にしていて、相手のちょっとした態度で、「自分のあの言い方が悪かったのかな?」とか「あの態度が失礼だったのかな?」と思って反省します。
そして「なんとか自分のことを好きになってほしい!」とか「嫌われてみんなから仲間はずれになるのは嫌だ!」と思って、反省点をふまえて謙虚な姿勢で相手に近づいていきます。
それなのに、かえっていじめられて、結局は除け者にされてしまいます。
長らく「自分は人から嫌われたり、除け者にされるような欠陥人間なんだ!」と思っていました。
「性格を直さなければ!こんな自分を変えなければ!」と日々、悩んで反省して、失敗して落ち込んで、ということを繰り返してきたんです。
一年365日、人間関係の悩みから解放された日は1日もないような感じ……いつも人間関係で悩み苦しみ、そして反省して、の繰り返しでした。
「人間関係がうまくいかない」という劣等感が私の中に呪いとなって、深く根づいていたのです。そしてあるとき、「みんなから嫌われてみんなから捨てられる」という私の悪夢が現実となりました。
その頃の私は職場のボスから好かれるために、一生懸命努力していました。しかし、好かれるどころか、仕事ぶりもまったく認めてもらえません。
「自分はちっとも認めてもらえない……やっぱりダメなんだ」と落ち込みます。
知人に相談してみると、「もう、ボスから離れて独立しちゃえば?」と言われます。私が「はあ、そうですね!」と何の気なしに答えると、いきなりその知人は「大嶋は独立を考えている」とボスに報告してしまいました。
そこからボスのいじめが始まってしまったんです。
ボスは「あいつはとんでもないことをしている!」といろいろな噂話を流します。公の場でも「あいつはとんでもないダメなやつ!」と言いふらすので、「私はもう辞めるしかない!」というところまで追い詰められてしまいました。
あとからお客様が教えてくれたのですが、私が独立をした後もボスは私のお客様に「あいつはあんなとんでもないことをやっていた!」というようなことを言っていたらしいのです。
「自分が悪いからこのようなことになったんだ……」
ボスに悪い噂を流されていることを誰にも言えず、私はひとりで反省していました。
「私がボスを怒らすようなことをしなければ、こんなことにはならなかったのに……」「もっと、ボスとの信頼関係をちゃんと築けていたら、こんなひどいことを言われずにすんだのに……」
自分を責め続けて苦しむ日々。
そんな最中に「これでもか!」というぐらい、いろんなところからボスが流している私の悪口が入ってきます。次第に、「もういい加減にしてほしい!」と相手に対する憎しみがふつふつと湧いてきました。
そしてある日、いつものように知人が「ボスがまたこんな悪口言ってたよ」と嬉しそうに言い始めたときに、私の中で何かがはじけました。
そして、「あの気持ち悪い人の話をされると、気分が悪いんで本当にもうやめてくれる?」と思わず口から出てしまっていたんです。
私は、ずっとキリスト教の家庭で育って「人の悪口は言ってはいけません!」「他人を尊敬しなさい!」と言われてきました。誰かのことを悪く言うのも嫌で、他人を蔑むようなことを言うのも大っ嫌いでした。
だから、私の口から思わぬ言葉が出てきてびっくりしました。
けれども、その瞬間に「あ!スッキリしたかも!」と私の中から何かが抜けていったような感覚がありました。
そして、「あの人の話を聞かせないで」と言えたのをきっかけに、ボスからの悪口が一切私の耳に入ってこなくなりました。それまではいろいろなところから私の噂話が流れてきていたのが「ピタッ!」と止まったのです。
「あ~!自分が下手に謙虚になっていたから、相手に嫉妬の発作を起こさせていたんだ!」ということが後になって理解できました。周りの人たちから「相手が不快な態度を取るのはあなたが悪いから」と教えられてきて、「自分が変わらなければ!」とずっと反省して努力をしてきました。
でも、ちっとも人間関係は楽にならないし、真面目に自己反省をして謙虚になればなるほどひどいことをされる、という繰り返しから抜けることができませんでした。
「あ!自己反省をして謙虚になればなるほど相手に嫉妬の発作を起こさせていたんだ!」というのがわかるようになって、私は自由になったんです。
相手の顔色を見て自分を反省すればするほど、嫉妬の発作を起こさせてしまいます。そこで、「あ!嫌なことを言ってくる人(嫉妬の反応をする人)は私とは合わないんだ!」と相手との関係を切ることが大事だったんです。
嫉妬の発作を起こす人たちとの関係を切ったら、私は孤独になってしまうかもしれない……とずっと思っていました。私のことを相手にしてくれる人を切るのが怖かったんです。
しかし、彼らとの関係を切っていくようになったら、嘘のように「どんどん自由になっていく!」のでびっくり。
まるで、手枷足枷が外れたように、自由に自分の思っていることを表現できるし、行動することが楽しくなります。嫉妬の発作を起こす人たちに気を使うのではなくて切り離していったら、あの苦しみが一切なくなりました。
いつも頭がクリアな状態になり、「今までの人生は何だったんだろう!」と思うぐらいに変わることができたんです。
私は職場のボスを尊敬していました。
しかし、ボスのような立派な人でも嫉妬の発作を起こしちゃうんだ!ということを知ったときに、聖書にある「義人(正しく正義を貫く人。自分の利害を顧みないで人のために尽くす人)はいない、ひとりもいない」という言葉を思い出しました。
あるとき「身体の痛みがちっとも消えない!」というクライアントさんがいて、「あれ?一生懸命に治療をしているのになぜ?」と悩んでいました。
このときにも、ふと「義人はいない、ひとりもいない」という言葉が浮かんできました。
そこで、「もしかして、この身体の痛みの問題を誰かに相談していたりしませんか?」と聞いてみました。すると、クライアントは「え?どうしてわかったんですか?」とびっくりします。
「信頼できる3人の友だちにいつも話を聞いてもらっているんです!」
嫉妬の発作は「自分よりも立場が低い人が自分よりも優れたものを持っている」という条件で起きます。
だから、「症状のことを聞いてもらう」ということ自体が「相手よりも下」という存在をつくってしまい、嫉妬の発作を起こさせやすくなってしまうのです。
そこで、「相談したり、悩みや苦しみを聞いてもらうのをやめてみましょう!」と提案しました。クライアントは来所から2週間経つと、「あれ?身体の痛みが激減しているんですけど!」とびっくりしています。
このことから、クライアントは嫉妬の発作を起こした相手の脳から電気ショックが脳に伝わってきていて、「痛みがどんどん酷くなる!」となっていた可能性が見えてきます。
もちろん、相談していた人たちは「すごくいい人!」で一見嫉妬の発作を起こすような人には見えない。でも、嫉妬は動物的な発作だから、まさに「義人はいない、ひとりもいない」なんです。
嫉妬の発作を起こしているときは、破壊人格に変身してしまうから、「気がつかないうちに意地悪なことを言っていた!」という感じになります。
「人間関係がつらい!」なんていう精神的なものだけではなくて、嫉妬は肉体的な痛みにも影響していているという説もあり、ものすごく興味深いものなんです。
そして、その「嫉妬」から解放されると、どんどん自由になっていきます。それまでの苦しみ悩みから解放されていくときに、「え~?これも嫉妬の影響だったんだ!」ということにびっくりするでしょう。
みなさんが嫉妬から解放されて自由に生きるようになったら、一般の方にもどんどん「嫉妬」のことが認識されるようになって、もしかしたら嫉妬がない自由な世界ができあがるかもしれない! と思うんです。
「人間は理性的な生き物」と思っていても、所詮「動物」なのが「嫉妬による攻撃」で証明されているような気がします。けれども、人間は動物とちがって、「言葉を使って現実を変えることができる」力があります。言葉を使えば、みなさんと一緒に新たなる世界が開かれていくような予感がしているんです。
今回で連載は最終回となります。
「嫉妬」のくわしい仕組みなどについては、現在執筆中です。書きながらも、ものすごくいろいろなことが見えてきて楽しくなっています。
みんなさんと一緒に嫉妬から解放された自由な世界を夢見ながら一生懸命に書いています。今年の夏頃には嫉妬についての本がすばる舎から出版されると思います。楽しみです!これまで、連載を読んでくださったみなさま、ありがとうございました!
大嶋信頼
バックナンバー
【第1回】自分より「良い境遇の人」「優れている人」を見ると嫉妬してしまう
【第4回】「文章が下手…」「容姿に自信がない…」自分を苦しめる劣等感
【第6回】嫉妬がなくなると人間関係の悩みが消え、自分に軸ができる、人に振り回されなくなる
【著者・プロフィール】
大嶋信頼(おおしま・のぶより)
米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。アルコール依存症専門病院、周愛利田クリニックに勤務する傍ら東京都精神医学総合研究所の研修生として、また嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室非常勤職員として依存症に関する対応を学ぶ。嗜癖問題臨床研究所原宿相談室室長を経て、株式会社アイエフエフ代表取締役として勤務。現在株式会社インサイト・カウンセリング代表取締役。ブリーフ・セラピーのT.F.T.(Thought Field Therapy)を学び認定トレーナー資格取得。
ブリーフ・セラピーのFAP療法(Free from Anxiety Program)を開発し、トラウマのみならず多くの症例を治療している。 著書に、『言葉でホルモンバランス整えて「なりたい自分」になる!』『それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも?』『無意識さんの力で無敵に生きる』 『支配されちゃう人たち』 『ミラーニューロンがあなたを救う!』(以上、青山ライフ出版)、『サクセス・セラピー』(小学館)、共著『児童虐待〔臨床編〕』(金剛出版刊)、『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』『「すぐ不安になってしまう」が一瞬で消える方法』(以上、すばる舎刊)がある。
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