DAY11.自分のせいじゃないのに……
DAY11.自分のせいじゃないのに……
やってしまった!!

入社以来、最大の過ちを犯してしまった……。
オレは上司のもとへとことの経緯を伝えに行った。

「合同入札の相手先の件なのですが
先方の担当者が、いつも大事な用件を
メールではなく、電話でしてくる人で、
しかもかなり早口で、滑舌が悪くて
何を言っているのかよくわからないんです。
先日も、打ち合わせの日程調整を電話でしてきて
17日ということだったので、予定をしていたのですが……」

「で、いったい何の話なんだ?」

「はい……、それが……」
「なんだ、早く言ってくれ」
「先方は17(じゅうしち)日ではなく、11(じゅういち)日の
午前10時と言ったらしく」
「11日って、今日じゃないか」
「結果的に、
打ち合わせをすっぽかしたことになってしまいました。
運悪く、今日は発注元のクライアントのプロジェクトリーダーも来ていまして」
「なんだと! で、どうなったんだ」
「スマホに電話がかかってきていたのですが、
着信音をオフにしていて気づかなくて。
結局皆さん、オレを1時間待って、
なにもせずに帰ったそうです」

──
その日、上司にこってり絞られたオレは、
夜、自宅で缶ビール片手に、
『仕事ができる人の逆転ワザ42』
を開いた。
「おぬしも成長が見られんのう」

出てきたと思ったらこれだ。
「しかたないよ。
だいたい、もとはと言えば、
先方の担当者が電話で早口で……」

「はぁ……。
今まで、おぬしは何を学んできたんじゃ!」

(なんだ?今日のセンニンはなんだか気合いが入ってるぞ……)
「出会ってからこれまで、
うだつの上がらないおぬしに『逆転ワザ』を授け、
少なからずも、効果を実感しておったはずじゃ」

「まぁ、たしかに……」
「今日は、おぬしが1人でできるかと期待し見ておったが……
目も当てられんとはこのことじゃ」
「そんなに言わなくても……」

「よいか?
ミスやトラブルが起こってしまったのは変えられん。
それをどう受け止めるかじゃ。
特に、今日のおぬしのように、
『自分のせいじゃないのに』というのはオモテに出る。
まずは、自分の非を認めるのじゃ」

(注;よくない報告をする時
クレーム、ミス、トラブルなどあまりよくない報告をする際、
多くの人は状況説明から入ります。
その中で、自分以外の原因を述べて
「自分はやるべきことをやっており、
トラブルは自分にとって不可抗力であった」
という布石を打っていくわけです。
しかし、この話し方は上司はイヤがるもの。
その理由は、先日のDAY10でも述べたとおり、
いつまでも結論がわからない話し方になるからです。
そうならないためには、最初から自分の非を認めてしまうことです。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE34より、一部抜粋、編集)
「まずは、『申しわけありません』と上司に言うんじゃ。
で、次に起こったトラブルを話す」

「そうか、そう言われてみると、
オレは、遠回りしながら説明しようとしてたな。
これじゃ責任逃れをしているみたいだ。
聞いてるほうもイヤだよな……」
──
翌日、しつこいかもとも思ったが、
オレは昨日の失態を、もう一度上司へ報告しに行った。
「昨日は申しわけありませんでした。
先方の担当の話が聞き取りにくいのは
前からわかっていたことでした。
確認しなかったのは、オレの責任です。
今後、重要なことは確認のメールを送るようにします」
「お、おう。
もう済んだことだ。しょうがない。
まあ、滑舌悪いお客さんはいるからな」

(あれ? 昨日はイライラしていた感じなのに、
今日は同情までされたな……ラッキー!)

──
「『自分は悪くないと言うほど責められ、
非を認めると責められない』
それが会社というものじゃ」

彼をこっそり見守っていたセンニンは、
「もうそろそろ免許皆伝かもしれんな……」
と独りごちて、スッと姿を消した。
(公開日:2016年10月18日)
[DAY11.完]
監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会