DAY9.仕事を任せてもらえない
DAY9.仕事を任せてもらえない
前回のプレゼンで、案件を勝ち取ったウチの会社は、
さっそく、合同入札した会社と打ち合わせを行った。

「……そうですね、ではここのネットワーク構築は、弊社で、
ここから先は御社のシステムと連携させて……」
オレの上司と、先方の担当者を中心に、
打ち合わせはどんどん進んでいく。
「この流れですと、
あとは全体の工数を見積もって、
すぐにでも取りかかれそうですね」
「そうですね。じゃあ、作業のスケジュールは、
来週中ごろまでに、彼から連絡をします」
そう言って、上司がオレの肩をポンと叩いた。

打ち合わせからの帰り道、
スケジュールや作業を含めた
もろもろの工程表のたたき台を、
来週の月曜日までに、まずは上司に出すことになった。
ちょうど1週間後だ。
──
しかし、その2日後の水曜日、
「あれ、どうなった?」
と上司が聞いてきた。
オレとしては、まずは過去の資料を見ながら、
明日、木曜日頃から、資料作成に手をつけようとしていた。
(任せてくれればいいのに……)

と、少しイラッとしながら、
「予定通り、月曜日までに出します」
と、返事をした。
「ちゃんとスケジュールは立ててるんだから、任せてほしいよ」
階段の踊り場で、オレが独り言をつぶやいていると、
「おぬしが『報告』をせんからじゃ」

と聞き慣れた声が返ってきた。
(注;報告
たとえば、「今週中に」と言われている仕事について、
水曜日頃に「例の件、順調に進んでいます」と、ひとこと中間報告をするだけで
「どうなってる?」と聞かれることはなくなります。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE29より、一部抜粋、編集)
「ビックリした、いつも突然現れるな……」
「わしはセンニン。自由自在じゃ。
それより、こんなところで油を売るヒマがあったら、
さっさと仕事を進めたらどうじゃ
報告する前に、仕事に着手しておかねばならんぞ」

「そうだね、仕事に戻るよ」
──
それから、たたき台の作成は、
上司の指示を得ながら、スムーズに進み、
無事、納期よりも少し早い、金曜日に上司に提出することができた。
──
その後も、できる限り、上司へこまめに報告するようにしたところ、
「どうなった?」
と聞かれることが減った気がする。

それに、気づいたことが1つ。
毎週金曜日に、オレの上司も参加する管理職の会議があるが、
その少し前に、上司へ進捗報告すると喜ばれるのだ。
(注;報告②
上司が細かく聞いてくる場合、上司が「状況を知りたいだけ」というケースと、
「折衝の仕方について指示を出したい」ケースに分けられます。
単に状況を知りたいだけのケースならば、
先手を打ってこちらから報告をすれば済みます。
この場合、タイミングは重要です。
例えば、管理職の会議の2〜3日前に、上司は部下や動いている案件の状況を聞きたくなります。
会議で部の動きを報告しなくてはならないからです。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE29より、一部抜粋、編集)
──
そういえば、転職して半年が経ち、
最近は特に、新しい顧客を担当したり、クレーム応対、社内の折衝、プレゼン……など、
けっこう忙しかった。

それと同時に上司も大変だったに違いない。
そんな中、新入りのオレにも
気を配っていただろう。
ということは、オレが思っている以上に、
「報告」をする必要があったはずだ。
センニンのおかげでうまく報告ができるようになって、
信頼関係も築けてきた。
その証拠に、次、動き始めている案件の担当に、
上司がオレの名前を挙げてくれているらしい。
「仕事は技術だけじゃないんだな」

そうつぶやくと、またセンニンが現れた。

「おぬし、なかなかわかってきたようじゃないか」
……相変わらず突然出てくるな。
(公開日:2016年10月13日)
[DAY9.完]
監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会