DAY7.プレゼンで聴衆が寝てしまう!!

DAY7.プレゼンで聴衆が寝てしまう!!


なんと、千載一遇(?)のチャンスが回ってきた。

 

同じ業界の大手企業から、ウチの会社のシステムを使って、
入札にかけたいと声がかかり、
そのシステムが、ちょうどオレの担当だったのだ。

もちろん、プレゼンするのはオレ。
うまくいけば、評価逆転のチャンス!

しかし、実を言うと……、
オレは人前で話すのが大の苦手なのだ。

 

「本番まで徹底的にプレゼンの練習をするぞ!」

個人練習をはじめて2日後、
ランチの後、チームのメンバーに会議室へ集まってもらい、
オレのプレゼンを聞いてもらうことになった。

照明を消して、プロジェクターで資料を映しながら、
資料を手に、話し始めたのだが……、

「……このように、エラー発生時には、
担当者に、即時、アラートメールが飛び……」

スー、スー、スー……

ふと、音が気になり、資料から顔を上げると、
なんと、参加者ほとんどが、居眠りをしていたのだ。

 

オレは、怒りよりも、かなりショックを受けた。

 

(そんなにつまらないのかな……)

でも、初回の練習だし仕方ない。
オレは、予定よりもプレゼンを早めに切り上げ、
参加者に意見を聞いて回った。

みんないろいろアドバイスをくれるが、
資料に関するコメントばかりだった。

(当たり前か……。
寝てたんだから、話は聞いてないだろう

 

みんなが会議室を去ったあと、ひとり片づけをしていると、
上司がフラッと戻ってきて言った。

「さっきのお前のプレゼンも資料も、良かったんだけどな。
……みんな、寝てただろう

(ギクッ! 痛いところを。気づいてたのか)

 

「居眠りするほうもするほうなんだがな。
お前もひとつ、次回工夫してほしいことがある」

「はい、何をすれば?」

「うん。プレゼンする間は、部屋の照明は、つけておいたほうがいい。
極力明るいほうがいいんだ。
電気がついていても、プロジェクターは意外と見えるしな」

(注;部屋は極力明るめに。
聞き手を寝かさないためには、まず、部屋は明るめにしましょう。
プロジェクターの輝度が1000ルーメン以上あれば、
電気をつけたままでもスライドは見ることができます。
念のため、掲示内容がよく見えるよう、スライドは白地に黒い太字を使いましょう。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE26より)

「あとは、『ブラックアウト』を使ったほうがいい」

「ブラックアウト……?」

(注;ブラックアウト。
15分に一度はスライドを「ブラックアウト」します。
ブラックアウトは、スライドショーを非表示にすることです。
キーボードの「B」を押します。
経験上、聴衆が集中してスライドを見続けられるのは、15分が限界だからです。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE26より)

「そういうワザがあるんですね」

「そうだ。知ってるか知らないかの差だけで、結果は大きく違ってくる

「わかりました!」

 

──

その日の夜、家で練習をしていたところ、

「そういえば、アノ本にも、プレゼンのテクニックのことが書いてあったな」

と思い出し、本棚にあった
仕事ができる人の逆転ワザ42』。
を開いてみた。

例のごとく、センニンが現れ、

「おぬし、プレゼンがうまくいかんかったようじゃの」

と、これまた例に倣って、憎まれ口を叩かれた。

 

「まだ、今日は初回だからだよ」

「ふむ。どうやら、上司からある程度指導があったようじゃから、
ワシからは、『予告型の進行』と『アイコンタクト』の2つの方法を授けよう」

 

(注;予告型の進行
効果①:「疑問→解決型」の進行を組み込んだ「予告型の進行」。
これは、「この方法だといくらかかるのか?」というように問いかけてから、スライドをめくり、見積もりの記されたページを見せるものです。
この方法は聴衆の集中力を増す他に、視線をこちらに引き寄せる効果があります。
手元の資料ばかり見ている聴衆を、スライドやプレゼンターに注目させることができるのです。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE26より)

(注;アイコンタクト
効果②:聴衆に視線を送る「アイコンタクト」を行う。
スライドや手元のパソコンを見て話していると聴衆の集中力は落ちやすくなります。
とはいえ、プレゼンの内容をすべて暗記するのは困難です。
だから、アイコンタクトをして話すのは、キーワードだけでかまいません。
キーワードは、数字と固有名詞です。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE26より)

「それだけでいいの?」

「さよう。少しの工夫だが、大きな違いが生まれるじゃろう」

 

「わかった。明日やってみるよ」

──

翌日、昨日と同じメンバーが、同じ時間帯に会議室に集まり、
プレゼンの練習を行った。

明かりをつけたまま始めたところ、
寝始める人はいない。

15分たったところで、「ブラックアウト」をしてみた。

「……という感じですが、
この場合、ふつうはどのくらいのコストが必要だと思いますか?」

ブラックアウト中に、少し議論をし、
しばらくたったら、またスライドを表示した。

参加者の疲れが見え始めていたが、
少し集中力が戻ったようにも思える。

そして、最後に、
「前年比113.4%です」
と、スライドではなく、ひとりずつ、顔を見ながら話し終えた。

すると、

パチパチパチ……。

 

上司が立ち上がり、満足げにこう言った。

「だいぶよくなったじゃないか。
話す内容はそれほど変わってないが、
昨日よりは、みんな一生懸命聞いていたしな

みんなはバツの悪そうな表情を浮かべながらも、
一様に、

「うん、昨日よりもよくなってるし、
聞きやすいです」

「たしかに。自然とひきつけられて、聞き入ってました

と口々に賞賛してくれた。

本番までもう少し。
なんだかうまくいきそうな気がしてきた。

 

(公開日:2016年10月11日)

[DAY7.完]

監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会