DAY13.成果が見えにくい仕事なんだ……

DAY13.成果が見えにくい仕事なんだ……


最近、オレにも腹を割って話せる相手が社内にできた。
以前、バトル(?)をした
同じ部にいる1つ年上で社歴が11年目の先輩だ。

ある日の夜、その先輩と飲みに行き、
ちょうど酔いが回った頃、
オレはいつの間にか愚痴モードに入っていた。

 

「今回、合同入札でプレゼンしたのは、オレなんですよ。
なのに、その売上数字は、営業部のヤツにつく
別に、オレは売上数字がほしいわけじゃないんッスよ。
ただ、周りから成果が見えづらいんじゃないかって。
先輩は、どう思います?」

 

「キミ、システムエンジニアになって何年だっけ?」

「え? 8年目ですけど……」

「う〜ん。
8年もエンジニアをやってるのに、
まだそんなこと言ってるの?

「う゛……」

 

「だいたい、オレらエンジニアの仕事は、
成果を数字で表しにくい仕事なんだよ。
営業部みたいに、『売上額』っていう
わかりやすい指標はないんだ」

「そ、そうですよね……」

 

オレの酔いが覚めてきたのは、気のせいじゃないだろう。

「キミのチームのところにさ、
先週から派遣社員さんが来てるじゃない?」

「そうですね、
サポートで来てもらってます」

「うん。じゃあ、そのことを例にして
成果を表現する方法を考えてみよう。
成果の指標になるような数値を考えるんだ
ポイントは、金額と時間だ。

例えば、その派遣社員さんに、
エクセルのデータ入力をやってもらっているとして、
キミがマクロや関数を使って、入力手順を簡素化したとしたら、
派遣社員さんが、1日に入力できる量が増えるだろ?
その時のビフォー・アフターはきちんと数字で記録しとくんだ」

(注;数値化するポイント
数値化するポイントは金額と時間です。
仮に、上の例で1日に入力できる量が30%増えたとしましょう。

派遣会社に1日1万円を支払っていたとして、
30%多くやってもらえたら、3000円分の効果に換算できます。

週5日として1万5000円、月間6万円。
年間にすれば72万円分の効果を生み出せたわけです。

このようにすれば、改善業務の成果は、数字で表せます。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE40より、一部抜粋、編集)

「そっか……。
そうやって数字で表せば、
オレ自身も客観的に自分を見れますね」

 

「だろ? だいたい、エンジニアなんて、
日がな1日パソコンの前に張りついて、
誰からも注目されずに日々が過ぎていく
地味〜な仕事なんだ。
だからこそ、そうやって、
自分の成長や成果を見つけていないと
モチベーションやらなんやら保てないよ

「へ〜、11年やってる先輩でもそうなんッスね〜」

 

「ん? なんかトゲがあるな」

「ちょっと親近感が湧いたんです!」

そのあとは、他愛もない話をして、
その日はお開きになった。

──

翌朝。

早めに出勤したオレは、
人事考課用の書類を作っていた。
上期の実績報告と下期の目標を記すようになっているものだ。

実は昨日一度上司に提出したのだが、
実績も目標も抽象的
ということで書き直しを命じられていた。

「……できた!」

昨夜、先輩から教えてもらったことを早速実践して、実績報告を書いた。
そして、後期の目標は数値で表した。

上司に見せたところ、

「お、昨日よりもちゃんとした内容になってるじゃないか。
昨日のは目標とは言えないものだったからな」

「は、はい……」

実は、昨日、来期の目標欄に書くことがなくて
(といっても、まだ入社して半年ってこともあったので)
『効率良く、ミスなく仕事をする』
と書いて出したのだが、案の定再提出となった。

合同入札のことは、オレがプレゼンしたとはいえ、
実際に数字がつくのは、この先も営業部だ

一応、受注に貢献したことを書いたが、
そのほかのことも書く必要がある。

思い悩んだ挙げ句、
昨夜、先輩を誘って、飲みがてら相談したというわけだ。

「お前も、この半年で随分成長したな。
こういう風に実績を書いてくれると、
成果がはっきりとわかって評価しやすいんだよな

「あ、ありがとうございます」

(先輩の入れ知恵ですけど……)

 


──

その夜、センニンにもこのことを報告しようと、
仕事ができる人の逆転ワザ42
を開いたが、センニンは現れなかった。

この前のこと、もしかしてまだ怒ってるのかな?」

オレは疲れていたのもあって、
センニンのことが気にはなったが、
その日はすぐに寝てしまった。


(公開日:2016年10月20日)

[DAY13.完]

監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会