DAY6.間が持てないから飲み会は苦痛……
DAY6.間が持てないから飲み会は苦痛……
家で一人、缶ビールを飲むのは好きだが、
会社の飲み会だけは何年経っても慣れない。
新しいお客さんのシステムリプレースが落ち着いた9月下旬、
上司の鶴の一声で、チーム内で飲み会をすることになった。
近々、退職する先輩の送別会だ。
お世話になった先輩を快く送り出したいと思う一方で、
苦手な飲み会のことを考えると憂うつになる……。

もともと、話すのがそんなに得意じゃないうえ、
飲み会の場合、雑談ができないと、間が持てないからだ。
「……先輩、先輩?
なんだか浮かない顔してますが、大丈夫です?」
「あ? あぁ、ごめん、ごめん」
今年4月、オレと同じタイミングで入社した新卒の男の子と、
来週の送別会の企画をしている最中だった。
(同期なんだけど、一応、オレのほうが年上だし、
業界歴も長いので、「先輩」と呼ばれている)
彼は、やる気満々で、今回もみずから幹事役を買って出てくれた。
おかげで、オレはお店選びなどのアドバイスをするだけで済みそうだ。

「お店も日時もだいたい決まったから、参加者に案内を送って、
あとは、当日仕切るだけだな」
「はい! わかりました!」
幹事は彼がしっかりやってくれそうでひと安心だ。
ただでさえ苦手な飲み会。
気苦労が減るのはありがたい。
──
そして迎えた送別会当日。
新卒の幹事の子は、忙しく、席を入れ替わり、注文をとったりしている。
一方、オレは、ふだんあまり交流のないアシスタントの女の子と
これを機に、コミュニケーションを取ろうと、
隣の席に座ってはみたものの、
……案の定、会話が続かない。

(どうしよう、どうしよう……。
仕事に慣れたか、なんて、入社半年のオレが聞くのもおかしいし、
休日何してるかを聞いて、変な誤解をされても困るし……)
オレが心の中でブツブツ言っていると、
ビールジョッキのフチに、フワッと“何か”が現れた。
センニンだ!

オレは、声を出しそうになったが、なんとか堪えた。
「おぬし、女の子とまともに会話もできんのか!」
(女の子、というか、そもそも雑談が苦手なんだ!)
と反論したかったが、声を出したら、それこそ会話が終わってしまう。
「だいたい、雑談が苦手なら、幹事をするべきじゃ」

(ギクッ! オレの心の声が聞こえたのか……?)
(注;幹事になる。
飲み会対策①:幹事は、運営のために席をはずすことが多くなります。
雑談の場に加わらなくて済み、気は楽になります。
しかも、他者から労をねぎらわれることもあり、一挙両得です。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE23より)
(そうだったのか。新卒の子といっしょに幹事をやるべきだったな)
「まぁ、いまさら言っても後の祭りじゃ。
次の方法は、『15分ごとに移動する』のじゃ」

(注:移動する。
飲み会対策②:1ヵ所に長くいると、だんだん話も続かなくなってきます。
ある場所に15分いたら、次の場所に移動する。
こうやっていると、あっという間に1時間たちます。
こうして、時間を短く感じられるようになれば、飲み会の気苦労は減るでしょう。
いろいろな人と話すこともでき一石二鳥です。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE23より)
(なるほど。よし、アシスタントの子と15分話したら、移動しよう)
「そして、3つ目は、根本的な方法ではあるが、『雑談スキル』を磨くことじゃ」
(それができないから、困ってるんじゃないか……)
「『雑談』といっても、おぬしが話す必要はない。
相手に話をさせるのじゃ」

(注:雑談スキルを磨く。
飲み会対策③:雑談の際、相手に長く話させたければ、「オープン質問」を使います。
例えば、「最近は何で忙しいのですか?」と聞けば相手は、
「そうだな。やっぱり決算関連の仕事かなあ。それと会議が多いんだよ」と相手は長く答えます。
これが、「最近は忙しいですか?」と答えがイエス・ノーに限られる質問(「クローズ質問」)をしてしまうと、相手は「うん」と答えたきり沈黙してしまう可能性があります。
このオープン質問の代表例は、5W2H「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、どれくらい」です。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE23より)
(そっか。うまく質問して相手がしゃべってくれれば、
それで雑談が成立するんだ)

「ふむ。理解できたようじゃの。
ときにおぬし。あんまりビールジョッキを見つめていると、
おかしいからの、ワシはそろそろ退散するゾ」

センニンはそう言って、現れた時と同じように、フワッといなくなった。
(よし、やってみよう……!)
「あの、いつも、いろいろサポートをありがとうございます。
アシスタントのお仕事はどうですか?
最近はどんなお仕事が大変ですか?」
そう話かけたとたん、アシスタントの彼女は、
いろんな話をし始めた。
「もうすぐ期末でしょう。
だからお金関係の確認とかで、
経理部から細かく確認がきたりで、けっこう大変なんですよ……」
「そうなんですか〜。
じゃあ、このあいだ、オレが出した稟議とかもそうですよね〜」
それまでなんとなく気まずい雰囲気だったのが、
一気に盛り上がり、あっという間に15分が経過した。
「あ、そろそろ、ほかの人にも挨拶しなくちゃ。
話に付き合ってくれてありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました。
また、お話ししてくださいね」
「ぜひ!」
そうして、2時間半の飲み会はあっという間に過ぎ去り、
お世話になった先輩にもきちんと挨拶ができた。
さらには、今まで疎遠だった人とも、仲を深められて、
飲み会への苦手意識はどこかへ行ってしまったようだ。
翌日出社すると、上司から、
「幹事の手伝い、ありがとな。
それに、いろんな人から、お前のこと、『アイツは気配りができる』って評判だったぞ」
と声をかけられた。

(公開日:2016年10月7日)
[DAY6.完]
監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会