【最終回】DAY14.「自信を持て!」と言われるんだけど……

【最終回】DAY14.「自信を持て!」と言われるんだけど……


「センニン、センニ〜ン?」

昨夜も現れなかったセンニンのことが気になり、
今朝も
仕事ができる人の逆転ワザ42
を開いてしまった。

 

しかし、出てこない

「もしかして、表紙を破っちゃったから、
不思議な力が使えなくなったとか?」

 

もんもんとしながら、出社した。
期末まであと3日。

「おはようございます!」

ザワザワ……

(ん? どうしたんだろう?)
みんな、朝からバタバタしている。
いつもより遅めに出勤したオレは、キョロキョロしていると、
上司から手招きで呼ばれた

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「ちょっとお前に相談があってな。
例の合同入札の案件なんだが、
単刀直入に言うと、
一部のシステムだけ、今期中の納品になったんだ」

今期ですか!?
ちなみに、一部、っていうと……?」

(まさか……、イヤな予感がする)

 

「うん、それがな、お前が担当している部分なんだ」

前倒しで進めていたから、
不可能ではないが、相当難しい
でも、ナゼ……?

「今回の案件の担当営業いるだろ?
なんでもな、ウチの部とは関係ないが、
アイツの大口案件が遅れて、
今期の納品が間に合わなくなったみたいで

「だからって……」

「お前の言いたいことはわかる。
知ってるだろうが、アイツはヤリ手の営業マンだ。
他の細かい案件をかき集めても、目標は達成できない
だが、お前がやってるシステムの売上はデカい。
しかも終わりが見えてる。

それにかけようと判断したんだだろう。
営業部のアイツが、今朝頼みに来た
しかも、後で役員からも内線で頼まれた。」

「そういうことですか……」

「営業に協力してやりたいし、
お前ならできると思うが、やれそうか?

「頑張ってはみ……」
と、言いかけて、はたと気づいた。

つい先日も、こんなやりとりがあったのだ。

その時も何かの仕事で「できるか?」と聞かれ、
頑張ってはみますが……
と、なんとも心許ない返事をしたところ、上司から、

もっと自信を持て

と言われたのだ。
その言葉に、戸惑ったのを覚えている。
それから結局、やる気がなくなり始めたんだ

そのことを思い出した瞬間、

やります!

と力一杯に返事をしていた。

 

(注;「もっと自信を持て」と言われるのはナゼ?
上司が言う「もっと自信を持て」という言葉は、
「弱気すぎる」「頼りない」と言っているのと同じで、
能力を積極的に評価しているわけではないのです。

その状況を変えるのは簡単です。
「できるか?」と聞かれたら、
「やります」
と言い切ればいいのです。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE41より、一部抜粋、編集)

「お! やってくれるのか」

「その営業マンが抱えてる数字はデカい。
彼を助けるというより、
会社の予測が狂うのを避けたかったんだ。

ただ、結局あいつはこれで達成率100%。
したたかなヤツだ

最後まで『達成率100%』を諦めず、
上も動かして実現し、評価と信頼を得る──
お前もそういう風になっていけ」

(注;数値化するポイント
したたかな人にとっては、達成率は90%も99%も同じこと。
ならば、90%に終わってしまうリスクを背負っても、
一気に100%達成できる可能性のあるギャンブルをします。

当然、難しい仕事になりますので、使える人は、誰でも使います。
スタッフは当然のように、時には上司、その上の上司まで総動員。

そして、なんとか実現して、達成するのです。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE42より、一部抜粋、編集)

「そっか……。
たしかに99%は未達だけど、100%なら達成ですね。
100%へのこだわりが必要ということですね

「そういうことだ。
今回の件は、お前にとってもいい経験になるに違いない。
手伝うから全力でやろう」

──

そこからあとのことは、もう覚えていないほど、忙しい3日間だった。

 

合同入札の取引先の担当者に経緯を説明し、
平謝りをしつつ、発注書をもらうてはずを整え、
それと同時に、出荷の準備……。

そして──、
なんとか、今期中に繰り上げになった部分の
納品を済ませることができた。

先方にはチクリと小言を言われたり、
社内の総務課から、どやされたり……
とまあ、散々な目にも遭ったが、

「しょうがない」と言いながら、みんなやってくれた。

「それにしても……疲れたな〜……」

 

ここ数日、オレのサポートをしてくれた後輩をねぎらおうと、
近くの居酒屋に2人で入った。
この後輩は飲み会の幹事を買って出たりと、なんだか可愛いやつなんだ。

「ホント、バタバタの日々でしたね」

「いや〜、ありがとな〜。
本来はオレの担当なのに」

「全然! ボク勉強になりましたし!
……あと、ちょっと気になってたんですけど、
先輩、最近変わりましたよね?

「え? そう? 何がだろう?」

「う〜ん……みんな言ってますよ
ボクからすると、的確なアドバイスをくれたりするし、
上司も、先輩のこと、『最近、あいつ頼りになる
って周りの人に言ってたし」

(へぇ〜。オレってそんなふうに言われてんだ)

 

「何か、勉強したりしてるんですか?」

「勉強は最低限しかやってないな〜……」

頭を巡らそうとした瞬間、センニンのことが浮かんだ

(そうか。もしオレが本当に変わったんなら、センニンのおかげだ)

今日はちょうど
仕事ができる人の逆転ワザ42
を持ってきていた。

まさか、センニンを紹介するわけにもいかず、
オレはこの本を後輩に勧めた。

 

「へ〜。ピンチとか、失敗とか、ミスしたことに対して、
1つずつアドバイスをくれる本なんですね」

「うん。あんまり褒められたことじゃないけど、
そこに書いてあるピンチとかが、
いちいち、オレの悩みに当てはまってさ

「わかります! ここの【CASE09】の
話かけられて仕事が進まない……
とか、ボク、超リアルタイム!」

「お前、見るからに人が良さそうだもんな」

「え〜、そうですかね〜。
あ! 【CASE06】の
人より時間がかかってる……
とかも悩みだな〜。
あと、ここもだな〜。う〜ん、なるほどね」

後輩が夢中で
仕事ができる人の逆転ワザ42
を読んでいるのを見たら、自然と、

「……よかったら、その本やろうか?」

という言葉が口をついて出た。

「え、いいんですか!」

「うん。センニンもそのほうが喜ぶだろうし」

センニン?

「そう、ビジネス書の妖精、『センニン』

「え〜、先輩って、冗談言うんですね〜」

「まぁね」

その時、後輩が持っている本をふと見たら、
センニンが

 

「精進せいよ!」

と言った……気がした。

 


(公開日:2016年10月21日)

[DAY14.完]

監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会