DAY8.頭が真っ白になってしまった!!!!
DAY8.頭が真っ白になってしまった!!!!
ついに、入札のプレゼン当日。
あれから今日まで、上司やチームのみんなと
力を合わせて頑張ってきた。
あとは、オレ次第……。
「やることはやった。力まずやれよ。
いつもどおりで大丈夫だから!」

上司に背中をポンと押され、
ガチガチになっていたオレは、少し緊張が解けた。

いざ、プレゼンが始まると、意外にも順調だ。
練習したとおりに、言葉もスラスラ出てくる。
これは、いいぞ、と思ったその瞬間だった。
次に話すことが思い出せなくなったのだ。
ヤバい!!!!

時間にして5秒もなかったが、
オレにとっては、永遠のように感じた。
ふと、手元の資料に目をやると、なんとセンニンがいるではないか!

そして、オレの肩に飛び乗り、こうささやいた。
「今、何を話していたか、を思い出すのじゃ」
(注;「今何を話していたか」
沈黙が続けば不自然になりますし、焦れば焦るほど思い出せなくなります。
そんな時、やってみるとよいことは、「今何を話していたか」を思い出すということです。
道に迷った時は、途中まで戻ったほうが安全です。
そのまま進むとますます深みにはまります。
話も同じで、頭が真っ白な状態で先を思い出そうとしても何も出てきません。
今、何を話したかを思い出せれば、その先が思い出しやすくなります。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』 CASE27より)
(さっき、何を話していたかなら思い出せそうだ!)
「よしよし。ちょっと、落ち着いてきたじゃろうから、聞き手に、
『どこまで話しましたっけ』と聞いてみい」

オレはセンニンに言われたとおり、
「え~っと、どこまで話しましたっけ?」
と聞いた。
すると……、
「『データの共有方法』のところまでだよ」
とどこからか声がしたと同時に、みんなが微笑み
会場の雰囲気が一気に和らいだ。
「そうでした! ありがとうございます」

話す内容も思い出し、
聞き手との一体感が生まれたおかげで、
その後はスムーズに進み、
無事にプレゼンは終わった。
帰り際に、今回、共同入札をした企業の担当者から、
「御社のプレゼンのおかげで、主催側にも好印象でした。」
と声をかけられた。
上司もオレも恐縮しきりで、会場をあとにした。

その日の夜、たまにはセンニンへ御礼を言おうと、
本棚の『仕事ができる人の逆転ワザ42』を開いた。
センニンが現れたと思ったとたん、

ポカッ!
「イテッ!」
また、杖で叩きやがった……涙

「おぬし、あれだけ練習して、
上司や仲間の力を借りておきながら、
本番で黙り込むとは、何事じゃ!!!!」
そんなこと言われたらぐうの音も出ない。
「ま、反省はしておるようじゃな。
過ぎたことはしかたない。
次も同じあやまちをせぬよう、工夫が必要じゃ」
「どうすれば?」
「まず、言いたいことは2つに絞るのじゃ。
3つになると、ひとつだけ思い出せない、なんてことが多々起こり得る」
「へぇ~」
「じゃがな、今日のように、商品メリットを話すには、どうしても3つ以上になるじゃろ。
そういう時は、語呂合わせがベストじゃ」

(注;語呂合わせ
どうしても3つ以上になる時には、語呂合わせのようにして覚えておく手もあります。
例えば、上司の部下に対する役割として命令、解説、援助の3つを説明する時、「命・解・援と言います」と先に話しておけば、最後のひとつを忘れても「援」という断片から「援助」が思い出せます。
自分が覚えやすい内容にしておくことは、聞き手にも覚えやすくなるという効果があるのです。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』 CASE27より)
「なるほど〜。
原稿をもってプレゼンするのはナンセンスだし、
だからといって丸暗記はできない。
語呂合わせなら、スラスラ出てきそうだね」
「そうじゃ。またプレゼンの機会があれば、やってみぃ」
「わかった!」

──
後日、共同入札した企業から、うれしい知らせが届いた。
どうやら、ウチの会社のシステムを含む提案が通ったらしい。
「やったじゃないか。
お前のプレゼンが効いたな」
オレは、思わずガッツポーズをしていた。
そういえば、こんなに感情をオモテに出したのは、
転職して初めてかもしれない。
「喜ぶのはいいが、
これからが大変だぞ」
と言う上司も、ニヤニヤしている。
うれしくて仕方がないようだ。

(公開日:2016年10月12日)
[DAY8.完]
監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会