DAY5.押しが弱くて説得できない!
DAY5.押しが弱くて説得できない!
顧客のシステムの全面リプレースの準備も進みつつある。
そんな折り、お客さんから一部機能の追加の要望が出てきた。
単純に機能を加えるだけだと、作業工数が増えてしまう。
そこで、オレは機能のいくつかを統合して対応する方法を考えた。
そうすれば、全体的な工数も減らせそうだ。

上司に話したところ、効率化できるならとOKをくれた。
問題はアノ先輩だ。
年はオレの1つ上で同じ転職組だが、
なんでも高校卒業と同時に、この業界に入ったとかで、
エンジニア歴はオレなんかよりもずっと長い。
そしてガンコだ……。

「先輩、顧客からの機能追加要望があって、
少しシステムの機能を統合してはどうかと思っているんですよ。
先輩のチームに一時的に負担をかけることになるかもしれないのですが」
「え? そんなのキャパオーバーだよ。
ただでさえギリギリでやっているんだし」
「そ、そうなんですけど。
機能を統合したほうが今後の作業も……」
「ん~、ごめんね。さっきも言ったけど、その必要はないと思うから。また話そう」
「あ、あの……」
先輩は何事もなかったかのようにオレに背を向け、
カタカタカタとパソコンに向かい始めた。
先輩はガンコな上に、声がデカく、押しが強い。
先輩チームのメンバーに同情の目を向けられながら、
オレはとぼとぼと自分の席に戻った。
その日の夜、結局センニンに相談するオレがいた。

「ふむ……。それでおめおめと帰ってきたわけじゃ」

「う゛……。オレは押しに弱いんです」
「『押しが弱い』という性格のせいにしとるのか。
たしかに、そういう場合もあるが……。
性格はそう簡単には変えられん。
できるなら、説得のためのスキルを身につけるのじゃ。
『仕事ができる人の逆転ワザ42』によると、
「『説得』とは、相手にこちらが意図した変化を起こすもので、
ビジネスを前に進めるためには欠かせないアクション」とある。
では、実際にどうやったら説得できるのか」

(注;説得に至るまでに……
説得に至るまでのプロセスを4つに分けて考えます。
ひとつめのプロセスは、相手に起こしたい変化が何かを伝えること。
2つめは、それが相手にとってどういう意味があるかを伝えること。
3つめは相手の言い分を聞くこと。最後の4つめは合意を得ることです
『仕事ができる人の逆転ワザ42』(CASE20より)
「なるほど……。
そういえば、オレ、何も考えずに先輩に話しにいってたな。よし……!!」
「うむ。合点がいったようじゃな」
──
翌日——。
「先輩、新しく検証を加える話なんですけど」
「昨日も言ったけど……」
「これをやれば、先輩チームも、オレたちも、効率化できるんです!」(プロセス①)
「ん?……」
お、ちょっと興味を持ってくれた。
「これまでやっていた作業が軽減されるんです」(プロセス②)
「でも、機能を統合するとなると、その手順書を作ったり、
予想外の動きをした時に対処したり、その場合はどうするの。
ほかにもいろいろ出てくるだろうし」
「そうですよね、そのご心配はごもっともだと思います」(プロセス③)
「先輩が言ったとおり、いろいろなケースがあって、
そもそもそれが業務をわかりづらくしてると思うんです。
だから今回機能を統合することで、もう少しシンプルになるんじゃないかと」
「プレテストをやってみて、うまくいかなかったら元に戻しましょう、ね?」
「そうだな……。そこまで言うならやってみようか」
やった……!!

先輩チームのメンバーが少し驚いた表情で、オレを見ているのがわかった。
上司にもこのことを報告し、
「お、アイツを説得できたか」
と、上司にも驚かれた。
(公開日:2016年10月6日)
[DAY5.完]
監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会