DAY12.久々に怒られた……

DAY12.久々に怒られた……


「つい、昨日、
まずは非を認めろと言ったばかりじゃろうが!」

 

「だから、謝ってるじゃないか」

「何を言うか!
それは、謝罪の態度ではないじゃろ!」

……

見ての通り、今夜は、センニンがお怒り中だ。

コトの発端は、この本。

 

そう、このセンニンという不思議な生き物が出てくる
仕事ができる人の逆転ワザ42』。

中身はスゴ〜くためになるビジネススキルが書いてある。
会社の後輩に見せてやろうと、
カバンに入れた時に、それは起こった。

ビリ……!!

 

書類が詰め込まれたパンパンのカバンに
無理矢理、本を押し込んだせいで
本の表紙が破れてしまったのだ。

「ぎゃー!!!! おぬし!
何をやっとるんじゃ〜!!!!」

「わざとじゃないんだよ!」

 

本を開いてもいないのに、
急にセンニンが現れた。

 

「そんなのはわかっとる!!
だいたい、まずは非を認めろと、
昨日言ったばかりじゃろうが!
それに、おぬしはカバンや机をもっと整理したほうがよい。
仕事の効率にも影響するぞ

……
とまぁ、これが一部始終だ。

それにしても、
今日のセンニンはやけに怒ってるな……。

「センニン、申しわけなかったよ。
今後は気をつける」

「ふむ……。
ワシも少しムキになりすぎたわい」

センニンの怒りは収まったようだが、
何だか後味が悪い

 

「おぬし、ちょっと気まずいと思っとるじゃろ。
まぁ、ワシとの間柄じゃから、今日はこれで済んだが、
今後、上司や先輩に叱られた時は、
最後に、『ありがとうございました』と言うもんじゃ」

 

(注;叱られた時

叱られ上手の部下は最後に「ありがとうございます」と言います。
これだけで空気は一気に変わります。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE36より、一部抜粋、編集)

「ふ〜ん。そういうもんなんだ。
ま、すみませんで終わるよりは、たしかにいいかもな」

「む……。おぬし、あんまりわかっとらんようじゃの
まぁ、よい。今日は遅いから、ワシはもう休むぞ」

──

翌日。

上司から書類の記入ミスについて厳しく注意を受けた。
上司がこの程度のことで厳しく叱るなんて珍しい。

 

「お前が作ってくれた
先方に出す予定の書類なんだが、
大事な部分に計算ミスがあった
数字の間違いは、大きなトラブルにつながる
ちゃんとチェックしろ!

「はい……。
申しわけありませんでした」

(2日続けて怒られてしまった。
なんだかついてないなぁ……)

──「叱られた時は、最後に、『ありがとうございました』と言うもんじゃ」──

センニンの教えがふいに思い浮かび、
オレはとっさに、

ありがとうございました!!!!

と、上司にお礼を言っていた。

すると、それまで、こわばっていた上司の表情が少し緩み、

わかってくれればいい
これからもっと重要な仕事も任せようと思っているんだから、頼むぞ!」

「は、はい……!」

気のせいか、上司との
〝心のキョリ〟ってやつが縮まった気がする。

 

(注;叱られた時

「ありがとうございます」と部下が言ってくれると、
上司は叱ったにもかかわらず、さわやかな気持ちになれます。
「言ってよかった」「わかってくれた」という実感も得られます。
部下に対して、好感を持つこともあるほどです。

仕事ができる人の逆転ワザ42』CASE36より、一部抜粋、編集)

(そっか、センニンも、
昨日は一応、気を遣って叱ってくれてたんだよな)

そのことに気づいたオレは、
その日の夜、センニンに改めて謝罪と感謝の気持ちを述べた

 

「おぬしも、そろそろ卒業じゃな」

 

ベッドに入ったころ、センニンがそうつぶやいたが、
その意味を探ることなく、オレは深い眠りへと落ちた。

(公開日:2016年10月19日)

[DAY12.完]

監修:濱田秀彦
文:すばる舎リンケージ「逆転」委員会